確率思考でビジネスを進めたいと考えたときに読む本


一時の低迷を経て、ここ数年でV字回復を成し遂げたユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)。V字回復の立役者であるチーフ・マーケティング・オフィサーの森岡毅氏とシニアアナリストの今西 聖貴氏による共著「確率思考の戦略論 USJでも実証された数学マーケティングの力」を先日読んだので、ご紹介させて頂きます。
http://store.kadokawa.co.jp/shop/g/g321512000337/

 

同書のテーマは“確率思考”。書籍内に一貫するメッセージは、“ビジネス戦略の成否は『確率』で決まっている。そしてその確率はある程度まで操作することができる” というもの。ビジネスに共通する「法則」を解き明かし、勝率が高い状況を見定めたうえで、経営資源を集中させ、成功へと導きだす。その考え方が数学マーケティングと同書では呼ばれています。
この数学マーケティングに則り同社が社運をかけて投資を行った一大アトラクションが「ハリー・ポッター」コンテンツです。その検討プロセスは非常に面白く、綿密に計算されたマーケティングメソッドを垣間見ることができます。

 

同書の内容は「数学マーケティング」ということなので、需要予測を中心とした数式の解説も紙幅をとって紹介されていますが、私が特に面白く感じたのは冒頭部分の市場構造や戦略立案に対する考え方。市場構造の本質とは、「消費者のプレファレンス」だと書かれており、プレファレンスは、消費者のブランドに対する相対的な好意度(簡単にいうと好み)だと解説されています。つまり、ビジネスの上では消費者の好意をより多く効率的に集めることが目的とされておりそれを実現する為の考え方が紹介されていました。

 

中では、市場からの好意をより集めるために、USJはテーマパークとしてのコンテクスト(文脈)を「映画だけのテーマパーク」から「世界最高のエンターテインメントを集めたセレクトショップ」へと変えた話が登場します。既存商品のターゲットを変更する場合によくあるのが、新たに設定したターゲット市場の方が従来の市場よりも小さくなること。USJはあくまで市場全体からの共感(好意)を得るべく、戦略的に、ターゲット市場を細分化しながらも全体で大きくしていく過程が克明に描かれており、これは他のビジネスでも共通する考え方ができるなと非常に勉強になりました。

 

シニアアナリスト今西氏の担当ページでは、需要予測に伴う数学的アプローチの考え方が書かれており、こちらは難解で理解するにはかなり苦労しますが、数学をベースにした戦略を立てることで、施策を実施した際の効果検証が細かに検証できるという大きなメリットがあります。「感覚的」な観点も必要だとは思いますが、着実に前に進むためにも数値ベースによる「理論的」な戦略も取り入れた考え方も身につける必要があるなと強く感じました。

 

テーマパークという特異な事例を扱った内容ではありますが、その本質はビジネス全般に使えるものが数多く紹介されている同書。是非一度ご覧ください。

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