外発的な動機付け(給与、報酬など)ではなく、内発的な動機づけによる社員のモチベーション向上には、社長とのコミュニケーションが不可欠です。社員面談で社員特性を理解し、コミュニケーションの機会を設けましょう。
社員面談において、社長と社員とが真剣にかかわる時間を持つことで、社員とのかかわりを深めることができます。社員面談における質問には、大きく5種類あります。答えやすさ(問いの大きさ)の順番に並べて、1ステップずつ問いを深めていくのが、問いを重ねる時の基本テクニックです。
①事実・経験を問う:何がありましたか?
②印象・感情を問う:何を感じますか?
③思考・考察を問う:何を考えますか?
④価値・原理を問う:何を大切にしますか?
⑤行動・決定を問う:何をしますか?
5つの問いの使い分け
①事実・経験を問う
各々がつかんでいる事実、情報、知識を集めたり、過去の出来事から経験や体験を呼び起こしたりする問いです。
・どんなことを知っていますか?
・どんな経験をしましたか?
・今何をしていますか?
②印象・感情を問う
印象、感情、感動、直感、心情、共感、イメージ、期待、願望など、心理的な内容を問う質問です。
・どのように感じましたか?
・いま、どう思っていますか?
・一番印象に残ったのは何ですか?
③思考・考察を問う
要点、原因、根拠、理由、前提、目的、手段、意図など論理的な思考や考察を問う質問です。
・なぜそう思ったのでしょうか?
・その狙いは何ですか?
・どういった意図があるのでしょうか?
④価値・原理を問う
思考や心情の裏にある価値観を見つけたり、体験から原理、法則、教訓を考えたりするときに使います。
・大切にするものは何ですか?
・これから何を学べますか?
・本当にそれでよいと思いますか?
⑤行動・決定を問う
個人や組織としての行動、決定、計画、方策などを問い、決意、本気度合い、やる気を尋ねるときに使います。
・明日から何をしますか?
・本日の決定事項は何でしょうか?
・どのように活かしていきますか?
自分の心を開いて相手に見せることを「自己開示」と呼びます。自己開示しやすい問いで相手の状況を把握し、一緒に物事を考えるためのスタートラインに立つのが、1つ目の問いの役割です。具体的には、①「事実・経験を問う」や②「印象・感情を問う」を使うことになります。それは、この2つが「裁かれない」問いになっているからです。
事実や経験は、すでに起こってしまった過去の話です。今さら変えようがなく、「良い悪い」といった議論の対象になりません。印象や感情も同じで、他人がとやかく言う筋合いのものではありません。本人がそう感じたなら「いや、それは間違っている」と他人が言えないものです。評価、判断、反論などの対象にならず、他人には口出しできないテーマだからこそ、安心して発言できます。
しかも、誰もが必ず何らかの答えを持っていて、それほど考えずに話すことができます。過去の経験は、どんな人でも話ができて、論争にならない安心できるテーマです。相手の語りに「なるほど」「それで」と相槌をしっかりやれば、どんどん話が出てくるはずです。
忙しい社長にとって社員との会話、情報収集は大切な時間です。会社の方向性をお互いに確認する時間でもあります。そのためにも、答えやすさ(問いの大きさ)の順番に、1ステップずつ問いを深めていき、社員との対話を通じて、コミュニケーションを深めていきましょう。そして、⑤「行動・決定を問う」で自ら掲げる目標を設定してもらい、「成功体験」を積んでいくことで、社員のモチベーションを向上させることができるのです。